一目均衡表とは
一目山人が発表した手法であり、時間論、波動論および水準論が三大骨子です。
基準線・転換線・先行スパン・遅行スパン・
三役好転についても解説します。
株h式投資について、初歩から勉強してみたい方は、
株式投資入門からお入り下さい。
1.一目均衡表の概要
一目山人(細田悟一氏)が昭和10年に発表した手法であり、エリオット波動原理およびトレンドライン分析、
と並んで筆者が最も頻繁に使用する手法の一つである。
この手法の基本概念は、「相場は、買い手と売り手の均衡が破れた方へ大きく動くため、
どちらが勝っているかを知るだけで十分」と言うものであり、このチャートを見れば
これが一目瞭然であることから、「一目均衡表」と名づけられている。
この分析手法は、エリオット波動に比較すると非常にシンプルであり、チャートの見方の
個人差が比較的小さいという特徴がある。「時間論」、「波動論」および「水準論」が
この理論の三大骨子であり、概要は以下の通り。
- 時間論: トレーディングにおいて変化日(変化が生じやすい日)を知ることは重要である。
一目均衡表では9(一節)、17(2節), 26(一期=3節), 33, 42, 51(二期), 65, 76(三期一相場:一巡),
129, 172の「基本数値」が変化日の予測に使われる。予測された変化日に反転できなければ、
延長されるか、あるいはさらに現在のトレンドがさらに加速されることが多い。
また、変化日の予測には「基本数値」以外の「対等数値」も使われる。対等数値の考え方の特徴は「変擬」にある。
変擬とは、以前に生じた時間区切りを、別の天井または底を出発点として擬することである。
変擬には、期間が隔たっている「隔擬」と、期間が重複している「重擬」がある。
なお、「対等数値」は「基本数値」に関連していることが多い。
- 波動論: 一目山人もエリオット同様、株価変動を波動として考えた。波動の形としては、
基本N波動、Y波動、P波動、S波動などがある。また、N波動の2連続が5波動、3連続が7波動、4連続が
9波動となるが、この考え方もエリオット波動原理の推進5波動、内一波がエクステンションを起こすと
合計9波になるという考えと一致する。
- 水準論: 波動のバランスのいい水準から、その波動の均衡水準を予測する方法を示したものであり、
N計算、E計算、V計算、NT計算等がある。
均衡水準の予測方法としては、
エリオット波動ではフィボナッチ比率を適用しているが、ここでは整数倍のみ使用される。
2.一目均衡表の作成
上図に示す通り一目均衡表は、ローソク足と5本の折れ線グラフから構成される。5本の折れ線グラフは、
基準線、転換線、先行スパン1、先行スパン2、遅行スパンと呼ばれ、それぞれ下記のように計算・描画される。
- 基準線: 当日を含む過去26日間の(高値+安値)÷2を当日の基準値として描画する。
- 転換線: 当日を含む過去9日間の(高値+安値)÷2を当日の転換値として描画する。
- 先行スパン1: (基準値+転換値)÷2を当日を含む26日先の先行スパン1として描画する。
- 先行スパン2:
当日を含む過去52日間の(高値+安値)÷2を当日を含む26日先の先行スパン2として描画する。
- 遅行スパン: 当日の終値を、当日を含む26日前の遅行スパンとして描画する。
先行スパン1と先行スパン2に囲まれた領域は「雲」と呼ばれる抵抗帯を意味し、網点表示される。
最近では、ネット証券やポータルサイトで簡単に一目均衡表を見ることが出来るようになったため、
わざわざ個人が描画する必要性は薄れた。しかしながら、相場予測においては、一目均衡表の先読みが不可欠であり、
この目的のためには各グラフの意味を十分理解する必要がある。
3.一目均衡表の解釈
相場を予測するためには、一目均衡表の中に隠された情報をうまく読み取る必要がある。以下にそのポイントを示す。
<基準線および転換線の解釈>
- 基準線は相場の基準であり、株価が基準線の上にあれば強い相場であり、下にあれば弱い相場である。
- 基準線の傾きの方向が相場の方向性を示す。したがって、基準線の上昇を伴わない株価上昇は短命に終わる。
- 基準線および転換線はサポートラインおよびレジスタンスラインとして機能する。
- 好転は買い転換、逆転は売り転換を意味する。
<雲(先行スパン1と2の間の抵抗帯)の解釈>
- 株価が雲の上にあれば強い相場であり、下にあれば弱い相場である。
- 雲(特にその上限と下限)はサポートラインおよびレジスタンスラインとして機能する。
- 雲(特にその上限と下限)は遅行スパンのサポートラインおよびレジスタンスラインとしても機能する
(筆者の解析から)。
- 雲の厚さはサポートあるいはレジスタンスの強さを表す。
- 雲の捩れは相場の変化をはらむことが多い。
<その他の解釈>
<一目均衡法用語集>
-
<基準線と転換線の好転・逆転>
転換線が、横ばいまたは右上がり勾配の基準線を下から上へ抜ける状態を「好転」と呼び、
逆に転換線が、横ばいまたは右下がり勾配の基準線を上から下へ割り込む状態を「逆転」と呼ぶ。
基準線の傾きは重要であり、単に交差するだけで、基準線の勾配が交差する方向と異なる場合は
「好転」あるいは「逆転」を意味しない。
<遅行スパンの好転・逆転>
遅行スパンが日足を下から上へ抜ける状態を「好転」と呼び、逆に上から下へ割り込む状態を「逆転」と呼ぶ。
-
以下の3条件を満足する状態を三役好転と言う。
- 基準線と転換線の好転。
- 遅行スパンの好転。
- 日足が雲を上抜ける。
<参考文献>
- 日本テクニカルアナリスト協会編, 「
日本テクニカル分析大全
」, 日本経済新聞社,2004年8月2日,第1版1刷.
- 林康史, 「
エリオット波動―ビジネス・サイクル
」, 日本証券新聞社,2000年6月1日,改訂新版.
- 「
会社四季報CD-ROM2008年3集夏号
」, 東洋経済新報社.
- アルバート-ラズロ・バラバシ(青木薫訳),「
新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く
」, 日本放送出版協会, 2002年12月,第1刷.
- ジェイク・バーンスタイン(青木俊郎訳),「
投資の行動心理学
」, 東洋経済新報社,2003年8月,初版.
- ピーター・リンチ(酒巻英雄監訳),「
ピーター・リンチの株式投資の法則―全米No.1ファンド・マネジャーの投資哲学
」,ダイヤモンド社, 2002年3月, 第11版.