トレンド分析とは
トレンドライン分析・移動平均線分析(グランビルの法則)・モーメンタム分析 に分類されます。
マーケットにトレンドがある場合にはここに記述した分析手法が役立ちます。
1.トレンド分析の概要
トレンド分析は、以下の3分析手法に分類される。
ここでは、
トレンド分析の中で筆者が最も頻繁に使用し、有用と思われる
トレンドライン分析と移動平均線分析の一部
について解説する。さらに、移動平均線分析に分類されている、便利な以下の3分析手法についても紹介する。
(MACDは後日追加予定)
トレンド分析には、他にも数多くの分析手法があるので、興味のある方は参考文献(1)を参照されたい。
2.トレンドライン分析
トレンドライン(以下
TLと略す)とは、
上下する株価の山と山あるいは谷と谷を結ぶラインのことであり、マーケットが長期的に動く方向を示している。
したがって、長期の株価予測を行うためには
トレンドライン分析は非常に重要である。
トレンドラインは株価の下値に対するサポート(支持)として機能したり、上値に対するレジスタンス(抵抗)
として機能したりするため、前者をサポートライン(以下
SLと略す)、
後者をレジスタンスライン(以下
RLと略す)と呼ぶ。
また、トレンドラインを上下に平行移動したラインをチャンネルライン(以下
CLと略す)
と呼ぶ。SLを上方へ平行移動したCLはRLとして機能し、
RLを下方へ平行移動したCLはSLとして機能する。
以下、日経225の2002年9月~2005年4月の週足を用いて解説する。
日経225は、2003年4月末までRL1とSL1に挟まれたトレンドチャンネル
(TLとCLで挟まれた領域:以下
TCと略す)に沿って下落し、
2003年5月に反騰を開始た。反騰後はSL2とRL2間のTCに沿って上昇し、
RL3を2回試した後SL3まで下落し、RL3とSL3の間で三角保合いを形成後、
さらにSL4とRL4間のTCに沿って上昇した。
高値を付けた後は、RL5とSL5の間で三角保合いを形成した後、再反発しSL6とRL6間のTC
に沿って上昇中である。ここで重要なことは、RLあるいはSLを一度ブレーク(上抜けまたは下抜け)された後は、
それぞれSLあるいはRLとして機能を反転することである。例えば、2004年3月上旬にRL3をブレークした後、
3月下旬にはSLとして機能を発揮している。さらに、2004年9月および2004年11月には再度RLとして機能している。
SL3についても、2004年5月にブレークされた後、2004年7月にはRLとして機能している。
筆者の経験から、上記以外のTLの特徴として以下の項目が挙げられる。
- TLはブレークを試す回数が多くなる程ブレークが難しくなる
(即ちSLまたはRLとしての信頼性が高まる)が、一旦ブレークすれば、その後の株価変動も大きい。
- 短期のTLよりも長期のTLの方が信頼性が高い。したがって、TLの信頼性の高さは、
5分足<日足<週足<月足の順である。
また、日経225の例ではTLによるサポートとレジスタンスの説明が容易であったが、一般には、
必ずしも正確にラインで反転するわけではない。その理由として、以下の項目が考えられる。
- 大きなサプライズニュースによる過剰な反応(例えば9.11の米国テロ)。
- 株価のサポートやレジスタンスとなるのはTLのみではなく、
一目均衡表
の雲や基準線なども同様の機能を果たす。
以上の解説で、
トレンドライン分析だけで日経225の変動のかなりの部分が説明できることがわかった。
しかし、最後にこれだけでは不十分であることを示しておきたい。
例えば、2003年11月の反転はなぜ起こったのだろうか?一度SL3が引ければ、その後のSLは予測できる。
しかし、SL3を引くためには2003年4月末の安値以外に、もう一点必要である。
これに答えるのが、すでに解説した一目均衡表であったり、次項で説明する移動平均線分析である。
このチャートは上記の日経225を一目均衡表で表したものである。
このチャートを見れば、SL3のもう一点(2003年11月の安値)が一目瞭然になる。
即ち、そこには雲の上限と基準線があり、これが強力にサポートした訳である。
一目均衡表で、「基準線の方向性が相場の方向性を示す」と解説したが、まさにこのケースは長期上昇
基調の中での短期の修正トレンドだったのである。
次に、SL5の第2点目(2004年5月)のサポートについて解説する。RL4で反落した株価はSL7で
反発することが予想されるが、下げが急になって来ると不安になる。こんな時は、他の指標を探すのが良い。
一目均衡表では、この位置は基準線を大きく下回っているし、雲の上限からは大分距離がある。
そこで、一目均衡表と並んでよく使われる移動平均線を見てみることにする。
チャートには様々な表現・評価方法があり、人によって重視しているチャートが異なるため、
主要なチャートの主要なチェック項目は常に注目しておく必要がある。
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3.移動平均線分析
移動平均線分析では、非常に有名な
グランビルの法則
(買シグナル・売りシグナル)がある。
筆者は、日足では5日、25日、75日移動平均線を、週足については13週、26週、52週移動平均線
をSLおよびRLの予測として利用するけれども、グランビルの法則は殆ど使用しない。
以下、SLおよびRLの予測への活用例を紹介する。
このチャートは前項で示した日経225を週足と移動平均線で表したものである。
このチャートを見れば、SL7の位置(2004年5月)に52週線があることがわかる。
したがって、この位置では強力なサポートが期待できる訳であり、安心して待つこと可能になる。
株価変動は、多くの人間の「行動心理」を反映したものである。したがって、科学的に解明可能であり、
これを解明するためには、その銘柄に注目して売買している主要な投資家がどのような指標を使って投資している
かを分析する必要がある。また、これを分析するためには、
過去の株価変動を様々な角度から分析し、仮説を立て、検証するというプロセス
が最も重要であるというのが私の持論である。理系思考の私にとって、投資は単なる金儲けの場だけではなく、
非常に興味深い科学的な実験の場でもある。
「
トレンド分析だけで十分」とか「
移動平均分析で大儲けした」という誇大広告のホームページを良く見かけるが、
このような稚拙な分析技術だけでプロの投資家に立ち向かうには、あまりにも無謀だと感じる。
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<参考文献>
- 日本テクニカルアナリスト協会編, 「
日本テクニカル分析大全
」, 日本経済新聞社,2004年8月2日,第1版1刷.
- 林康史, 「
エリオット波動―ビジネス・サイクル
」, 日本証券新聞社,2000年6月1日,改訂新版.
- 「
会社四季報CD-ROM2008年3集夏号
」, 東洋経済新報社.
- アルバート-ラズロ・バラバシ(青木薫訳),「
新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く
」, 日本放送出版協会, 2002年12月,第1刷.
- ジェイク・バーンスタイン(青木俊郎訳),「
投資の行動心理学
」, 東洋経済新報社,2003年8月,初版.
- ピーター・リンチ(酒巻英雄監訳),「
ピーター・リンチの株式投資の法則―全米No.1ファンド・マネジャーの投資哲学
」,ダイヤモンド社, 2002年3月, 第11版.